#2 都市部の未来を変える農業

Aquaponics Design Lab.

この記事をシェアする

※モニターを希望する場合は記事を最後までお読みください

企業のSDGsを推進させる商品やテクノロジーに注目したSDGsメディア「サステナブルフロンティア」のインタビュアー、奥村真尋(専修大学経済学部3年)です。

2021年、私は衝撃のニュースを目にしました。「ドイツの大手スーパーが、究極の地産地消として、スーパーの屋上で育てた野菜を真下にある売場で販売する」。近年、フードマイレージ(食料の輸送距離)への意識が高まっていますが、屋上から売場までの距離はおそらく数十メートルでしょう。フードマイレージを極限まで縮めたこの究極的な仕組みはルーフトップ農園と呼ばれ、実は既に数年前からこの世に誕生していました。

では、私は何に驚いたのか。それは今回、ドイツの大手スーパーが導入したアクアポニックスという農法です。そのスーパーがアクアポニックスを導入した経緯は、屋上という限られた面積から収穫できる野菜の量を飛躍的に向上させるからでした。従来のルーフトップ農園と比べ収穫量はその何倍にもなると言われています。そして、アクアポニックスは土栽培よりも水を90%節約し、災害時にインフラとして機能すると言います。実は日本でもアクアポニックスが注目され、飲食店や廃校といった場所でも野菜が栽培され始めています。

アクアポニックスとは一体何なのか。今回、日本でアクアポニックス農法を実現する設備を開発しているAquaponics Design Lab.(アクアポニックスデザインラボ)代表の大竹洋平さんにお話を伺いました。

>アクアポニックス農法って何ですか?

魚と野菜を同時に育てて資源循環させる農法をアクアポニックスと呼びます。一般的なイメージだと野菜は土から育っていますよね。アクアポニックスの場合は魚が泳ぐ水で野菜を育てるんです。

実は、アクアポニックスでは、魚の出す排泄物を微生物によって栄養豊富な天然の肥料に変換できるんです。それが野菜に必要な栄養になるんですね。その一方で、野菜は魚の水を浄化します。水をリサイクルしながら養殖魚と野菜を一緒に育てることができる方法です。

 

アクアポニックスはSDGsな側面をいくつも持っています。まず、省スペースで効率的に野菜を育てることができます。アクアポニックスは水耕栽培なので土壌栽培と比較すると、成長が約1.5倍早いと言われています。

栽培設備を立体的にすれば、土壌栽培に比べて収穫効率は何倍にもなることもあります。土壌栽培で起きやすい連作障害(同じ科のの野菜を同じ土壌で繰り返し育てると生育不良になる現象)も起きませんので、同じ種類の野菜を繰り返し栽培することができます。

そして、水を排出しない、魚に有害な農薬の使用はできませんので、周辺環境への負荷が小さいです。繰り返し水を再利用するため、土栽培と比較して90%、水耕栽培と比較して10〜15%の節水になると言われています。野菜を食べられるのはもちろんですが、養殖魚を出荷することも可能です。

>アクアポニックスは資源循環型農法なんですね。なぜ、大竹さんはアクアポニックスに目を付けたんですか?

2013年頃にアクアポニックスをテレビで見たことがきっかけです。こんな農法があるんだと驚きました。大規模な農業地を活用したアクアポニックスもあるんですが、私が取り扱っているのは都市型アクアポニックスです。

コロナ禍を迎える数年前に東南アジアの都市を訪れた際、実際に住宅街の中でアクアポニックスを使って野菜を育てている場面に遭遇しました。地域住民が地産地消している姿が日常にあって、そこから日本の文化や気候に合わせた都市型アクアポニックスの開発に取り組むようになりました。この都市型アクアポニックスには、今の日本に新しいライフスタイルを提案できる可能性を感じています。

>都市型アクアポニックスとは、一体どういうものなんでしょうか?

限られたスペースを最大限に生かすために、アクアポニックスに必要な設備をすべて一体とした栽培システムを開発しています。 都市型アクアポニックスのスタンダードモデルに必要な面積は10㎡ほどのスペースです。そこで約1000株の野菜と100㎏の魚をストックすることができます。成長の早い葉物野菜を栽培すれば、毎日30株の野菜を収穫することも可能です。

 

都市型アクアポニックスが特徴的なのは、都市部で効率的に有機野菜を生産することができる点です。立体の水耕栽培装置と水槽を上下に組み合わせることで、狭い土地でも効率的に魚と野菜を生産することが可能となっています。

都市部の人と一次生産の現場の接点がどんどん少なくなっています。年代を問わず、野菜がどのように育つかを見たことのない人もいます。それぐらい農業が縁のないものになっています。私たちが頂く食べ物がどのように育ちどういう流れで体の中に入ってくるのか。魔法のようにパッと食べ物が現れるのではなく、そこには生産者の苦労があり、自然の厳しさがあります。

食品ロスや環境問題への関心が高まっていますが、それを本質的に理解するために都市型アクアポニックスは非常に大きな役割を果たすと考えています。都市部には人口が集中し多くの人が暮らしています。その多くの人たちに食べ物の生産に関わってもらうことに価値があると思います。

都市型アクアポニックスで栽培された野菜は資源効率はとても素晴らしい反面、栽培面積が限られており、採算ベースに乗せられるような生産量が確保できません。野菜を売って収入を得るような事業には不向きです。

しかし、「別の事業と組合せて相乗効果を生み出す」、「小さな土地でできるだけ多くの野菜を収穫する」、「フードマイレージの少ない地域栽培の新鮮な野菜を地域の人が食べられる」、こうした点を踏まえればSDGs時代にとてもマッチしているものでしょう。

 

>なるほど。都市型アクアポニックスの魅力が伝わりました。都市型アクアポニックス普及の先には、どんな社会になりそうですか?

都市型アクアポニックスは防災機能としての可能性を持っています。居住地域が被災して食料の供給がストップしても、一時的な食料拠点となります。被災の状況にもよりますが、そこで野菜を引き続き栽培することも可能です。

マンションの共有部分、地域の避難場所、店舗横の空き地、空き駐車場など、都市部でも設置できるスペースは見つけることができます。地域住民の共同施設、会社の福利厚生、使い方も様々です。

都市型アクアポニックスは、決して既存の農業を置き換えるものではなく、設備が普及した後でも都市で食料の自給が完結するものではないでしょう。私は都市住民が日常的にアクセスできる農園があることで、単に新鮮な野菜を手に入れやすくなるだけではなく、野菜と魚が育つ過程や仕組みを目にすることで、一次生産の現場、自然環境に意識を向けるきっかけを生み出すような「気づきの装置」になると考えています。

アクアポニックスを利用する一人一人に気づきを提供し、持続可能な社会を実現するための行動を生み出す。そんなプロダクトに育てていきたいです。

 

>都市型アクアポニックスは大きな可能性を秘めていますね。最後に大竹さんから一言お願いします。

私たちの生活は経済とテクノロジーの進歩により豊かさを享受する一方で、自然の営みと人の生活が切り離され、つながりが薄れています。その結果、気候変動、土壌や大気、海洋汚染を引き起こし、人類も含め様々な生物への影響が顕著になり始めました。

いま私たちに求められていることは自然を守るだけではなく、現状よりも良い状態に再生し、次の世代に豊かな環境を引き継ぐことだと考えています。

だからと言って、不便さや我慢を強いるようなアクションは持続可能な状態ではありませんから、環境に配慮しながらも、今よりも良い生活を提供できる、そのようなアイデアを形にしていきたいです。

 

今回は、都市型アクアポニックスをご検討の方に、オーダーメイドプラン(今回は税抜き価格で500万円以上に限定)を先着3社限定で導入をご支援させて頂きます。1社目は総額10%オフ。2社目、3社目は総額5%オフで提供させて頂きます。詳しくはサステナブルフロンティアにお問い合わせください。

Aquaponics Design Lab.

代表 大竹 洋平

コーポレートサイト(https://www.aquaponics-design-lab.com/

1990年生まれ。アクアポニックスデザイナー、野菜ソムリエ、食の6次産業化プロデューサーLev.3。明治大学農学部卒業。持続可能な食料生産方法を探す中でアクアポニックスと出会い、自宅の水槽でアクアポニックスに取組み始める。その魅力と可能性に注目し、2018年アメリカへ渡り、トレーニングを受ける。アクアポニックスシステム設計・施工、栽培技術の指導、YouTubeを利用した認知活動を行っている。

この記事をシェアする

What's Sustainable Frontier企業と社会の未来を拓くSDGsメディア
「サステナブルフロンティア」とは?

サステナブルフロンティアとは、SDGs達成を推進するテクノロジーを持ち、社会にイノーベーションを起こす注目企業の商品やサービスを紹介するWEBメディアです。

読者は導入したい商品やサービスがあれば、モニター価格(※総記事数の25%を上限にモニター価格の代わりに特典を用意している場合有り)で購入することができます。

  1. HOME
  2. 新着情報
  3. #2 都市部の未来を変える農業
NA Services
PAGETOP