#5 購買履歴で病気を防ぐ

シルタス株式会社 SIRUTASU Inc.

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※モニターを希望する場合は記事を最後までお読みください

企業のSDGsを推進させる商品やテクノロジーに注目したSDGsメディア「サステナブルフロンティア」のインタビュアー、奥村真尋(専修大学経済学部3年)です。

SDGsの中でも「健康と福祉」がターゲットにあるように、どの国で暮らしていても人々は健康に生きる権利を有しています。この日本の医療制度では、原則3割を国民が負担します。日本は国民の医療費負担が少ない国と言われていますが、国民の負担増がひんぱんに議論されており、財政は悪化の一途を辿っています。今年の10月からは一部の高齢者の医療負担が増えます。今後、国民の負担割合が増えることはあっても減ることはないでしょう。

そこで政府が掲げているのが病気の「予防」です。2020年からは予防医療への取り組みが不十分な自治体の交付金を削減する制度を導入するなど、非常に注力しています。

アメリカなど医療負担が大きい国では、既に治療医療から予防医療へと転換しています。しかし、「予防」とは、まだ発症するかどうかも分からない病気を防ぐこと。人々は医師に病気だと診断されるまで、自分は健康だと信じています。人々の「予防」へのモチベーションを高めることは容易ではありません。

しかし、この日本に、人々の「予防」意識を芽生えさせることに成功させ、省庁や自治体とも連携しながら急拡大しているスタートアップ企業があります。それがシルタス株式会社です。人々がすることは買い物で使うクレジットカードやポイントカードをアプリに登録するだけ。たったこれだけでその人に必要な栄養素が分かるようになると言います。

一体どういう仕組みなのか?シルタス代表取締役の小原一樹さんにお話を伺いました。

 

>病気を予防するアプローチに成功していると聞きました。日本で健康社会を実現するために、予防医療は必ず推進しなければならないことです。大変興味がありますが、どのような事業を展開されているんですか?

市民の皆様に身近な所では、日々食料品のお買い物をするユーザー向けにSIRU+(シルタス)というヘルスケアアプリを提供しています。

すごくシンプルな機能のアプリです。スーパーなどの購買履歴を活用して、その人に足りない栄養素をお伝えしています。何を買ったのか、個々のユーザーごとにデータを蓄積します。商品には栄養素が登録されているので、これまでに買った商品から計算し、現在ユーザーがどの栄養素をどれくらい摂っているか、それぞれの過不足を教えてくれます。「最近、ビタミンDが不足していますよ」、「食物繊維が不足していますよ」といった具合にアプリのグラフで一目で分かるんです。「この商品を買えば、あなたに足りない栄養素が摂れますよ」と体に必要な商品の提案もしてくれます。

買い物している時に管理栄養士の代わりにSIRU+が横でサポートしてくれると言えば、イメージしやすいかもしれません。しかも、その管理栄養士は食の好みもしっかりと把握した上で栄養提案をしてくれます。

SIRU+では、個々人の食の嗜好性までAIで学習し、特定の栄養素を補う商品が複数あっても「あなたが好きなこの商品で補いましょう」と、無理なく楽しく健康を手に入れられる提案をしてくれるんですね。私たちはSIRU+を「がんばらないヘルスケアアプリ」と呼んでいます。

 

そして、SIRU+が他のアプリと圧倒的に違うことは、ユーザーにとってイージーなことです。「どの商品を買ったか写真を撮って送って下さい」。「個別商品はいらないのでレシートの写真を撮って送って下さい」。これらの作業が一切ありません。

利用するたびに商品の画像を何枚も撮るのはすごく面倒です。レシートにしても1枚でも撮り忘れたらデータの精度も下がりますし、「もういいや」と健康管理のモチベーションも一気に下がります。SIRU+は、これまでの買い物時に行っていたことを、従来通り行うだけでデータを蓄積できるんです。クレジットカードで支払したり、現金決済でもポイントカードを会計時に出すと思うのですが、それだけです。追加する作業が1つもありません。

どの栄養素を含む商品をどれだけ買ったか、その都度クレジットカードやポイントカードに残った購買履歴からSIRU+が把握します。これまで同様に支払いを済ませたら、その直後にはユーザーに必要な栄養素情報が更新されています。唯一手間があるとすれば、SIRU+のアプリにクレジットカードやポイントカードを登録することです。これはもちろん1度きりです。

>ユーザーにとって必要な情報をユーザー負担0で提供する。この利便性が人々と予防を紐づけているんですね。どういう発想でこのサービスが生まれたんですか?

ほとんどの人は自分の好きなものを食べたいと思うんですね。私自身もすごく食べることが好きです。お酒も飲みます。今、体に変化が起きているかどうか分からないタイミングで「これとこれは食べてはダメです」と言われても、納得感が生まれない。この点がこれまで予防を事業として成功させることができなかった原因だと考えています。

食を楽しむという本能を禁欲的に「何となく、ぼやっと」押さえつけようとしても、それでは人の行動は変わらないと考えています。こうした思いは私だけでなく皆様も同じではないでしょうか。

体の変化をしっかりと数値で可視化する。「この栄養素が足りないからこういう症状が起きるかも知れない」。そこまでして、やっと納得感が生まれユーザーの行動変容が起こります。また、ユーザーの経済的障壁を無くすため、利用料を0円にしているのも重要なポイントです。人々の習慣や心理を考え抜いて出したサービスだからこそ多くの人から支持されているのだと思います。

「病院で検査して、あなたの数値はこうで、こうした病気です」と言われれば健康に気を付けるのは自然の流れです。しかし、私たちは「別に今の私には関係ない」という層にアプローチし、気づいていない危険因子を伝え、行動変容を起こすことが社会的意義だと考えています。病気ではなくとも、例えば肌荒れ改善に寄与する栄養素の表示を出すなど、若年層でも気になるような情報も提供し、ユーザー層の幅を着実に拡げています。若いうちから自分の健康状態を知り、改善していく行動が浸透すれば持続的な社会保障に近づいていくでしょう。

 

>人間の特性を分析した事業展開で多くの人から支持されているんですね。現在は事業規模はどれほど拡大しているんでしょうか?創業時から拡大を続けている理由も合わせて教えて頂けませんか?

現在は、約450店舗でSIRU+を利用できます。ユーザーは現在25000人以上でSIRU+対応店舗の増加に合わせてどんどん増え続けています。ユーザーからは「このスーパーで使えるようにしてほしい」との声が毎日のように届いています。2016年の創業当初から省庁や自治体とも連携しており、これまでの連携実績は10件以上あります。

私たちはSIRU+だけではなく、購買データをヘルスケアに活用した世界初の分析ツールSIRU+Bizも展開しています。SIRU+Bizは小売店やメーカーに対する有料サービスです。私たちはSIRU+Bizによって事業をマネタイズしています。

 

SIRU+Bizを説明する前に、SIRU+の数値に触れさせてもらっても良いでしょうか。アプリ会員が日常的にそれを使っているかを測る数値にアクティブ率というものがあります。通常のアプリでは4%程度のものが、SIRU+は68%と通常の10倍以上の数値となっています。SIRU+がユーザーの生活の一部になっている証拠です。そして、SIRU+でおすすめされた商品は20%のユーザーが購入します。小売店では購入点数や顧客平均単価を向上させる施策に日々苦労している中で、小売店にとってSIRU+が持つ数値は驚異的だと言えます。

SIRU+Bizでは、小売店がどんどん参加することでビッグデータが蓄積され、今まで見えなかった顧客の行動が把握できるようになっています。仕入れる商品の種類や数量、これらを正確に把握することで、小売店は最適の仕入れと販売を実現できるようになります。近年は食品廃棄の問題が取り上げられていますが、食品ロス削減にも繋がるだけでなく、ロス削減は利益率向上にも繋がっていきます。

 

私たちのビジネスでは、消費者の需要を拡大創造し、小売店やメーカーがその需要にベストな形で商品を提供することができます。あるメーカーでは「ビタミン」を手軽に補えるドリンクを「ビタミン」が足りないユーザーにおすすめで表示しました。なんと、売上が1.7倍になりました。

それだけではありません。企業の費用対効果が検証できれば、ユーザーにクーポン提供やサンプリングなどを行うことも、これから十分可能です。そうなれば、病気予防で健康を手に入れられるだけでなく、ユーザーの生活全体に欠かせないものになると考えています。消費者に喜ばれる価値を提供し、消費者のニーズを的確につかんだ企業が消費者から選ばれる。消費者と企業が共に成長できるのが私たちのビジネスモデルです。

また、私たちの拡大がこれからも続いていくという点では、今おもしろい取り組みをしています。青森県の弘前市と共に社会実験をしているんですが、SIRU+のユーザーとそうではない人の健康状態の差を検証しています。既に、その結果を論文発表できる1歩手前の段階まで到達しています。学会に提出された論文はマーケティングデータとしてはこれ以上ない強力なものになると思います。そうなれば、SIRU+をやらない理由がなくなってくる。SIRU+を導入しない小売店は選ばれない時代が近いかも知れません。

>今後の事業展開はどう考えられていますか?

日本の健康社会に革命的なインパクトを生むビジネスがSIRU+です。そして、シルタスを世界的な企業にしたいと考えております。実は予防リテラシーが高い国々が世界には沢山あって、私たちの存在を聞きつけた海外企業からのオファーが増えてきています。

私たちが最終的に目指す社会は、より便利で健康に生きやすいものです。そのためには情報銀行とのデータ連携をする必要があります。情報銀行とはパーソナルデータを一括管理し、ユーザーに有益な情報を多岐に渡り提供するものです。銀行と名が付くのは情報を預けることで、利息のように生活の利便性を還元してくれるからです。健康にまつわる情報も、食べ物以外に服用薬や健康診断結果などがあり、それらを統合することでより人々が健康に近づけると考えております。実際にフィットネス事業などの連携も始めようとしています。

将来的な話ですが、高次のAI冷蔵庫もメーカーが開発に取り掛かって②います。家の冷蔵庫の中にどんな食材があるかも把握し、そこから栄養素や献立を組み立てることもできるようになるでしょう。情報を厳重に管理しながら、世界中を健康にするために全力を尽くしていきます。

>シルタスのサービスが選ばれる理由がよく分かりました。最後に小原さんから一言お願いします。

私たちは社会を変えようとしていますが、ユーザーの皆様はライフスタイルを変える必要は一切ありません。ユーザー自身が「がんばらなくてもいい」からこそ私たちが選ばれると考えています。頑張るのは私たちで、ユーザーの皆さまに「いつの間にか生活の質がどんどん上がっている」と言っていただけるよう尽力していきます。

今回、より多くの市民の皆様にSIRU+をご利用して頂ければと、こちらの記事をご覧になられたスーパーマーケットやドラッグストアの小売店の方々に先着2社限定でモニター提供をさせて頂きます。初期費用、全店舗の1年間の月額利用料を共に無料とさせて頂きます(※2022年5月末までのお申し込みが対象)。詳しくはサステナブルフロンティアまでお問い合わせ下さい。

シルタス株式会社 SIRUTASU Inc.

代表取締役 小原 一樹 

コーポレートサイト(https://corp.sirutasu.com/

大学生の時に1年休学して世界一周。その後、フードテック事業を展開する企業の会社員を経て、2016年シルタスの前身となるアドウェル株式会社を創業。これまでに「クックパッド・アクセラレータープログラム」採択、「経済産業省主催 電子レシートアプリコンテスト」最優秀賞、「第三回日本アントレプレナー大賞」北尾吉孝賞受賞、「総務省情報信託機能活用促進事業」参画、「大阪府主催 健康産業有望プラン発掘コンテスト」大阪府知事賞(最優秀賞) などの実績がある。購買履歴で病気を予防するという世界初のビジネスモデルで、これまでに約6億円の資金調達に成功している。

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